バイオモニタリング

バイオモニタリングは様々な用途に有効で、適切に実施され結果が正しく解釈されれば、政府の農薬行政当局や公衆衛生行政当局に、ヒトの化学物質への暴露についての重要な情報を提供できる、新たな科学研究分野です。

クロルピリホスは、米国疾病対策センター(CDC)による最近の研究報告によると、バイオモニタリングによりクロルピリホスの暴露により、実験動物の尿中のバイオマーカーの値がわずかに上昇することが明らかにされました。このバイオモニタリングで実験動物に作用が認められたクロルピリホスの濃度は、米国EPAやその他の機関が確定した実験動物に悪影響を引き起こすレベルに対して数百分の一という低いレベルでした。

ダウ・アグロサイエンスは、引き続き政府の専門家や医学関係者と協力してこのデータを解釈し、自社製品の安全使用を確実なものとするために専心努力していく所存です。

背景

バイオモニタリングは、ボランティアから提供される体内組織や血液、尿など体液の化学物質あるいはその代謝物を測定して、その化学物質(天然及び合成双方を含む)のヒトへの暴露を評価する方法です。

人間の体が生きているというだけで、さまざまな物質をごくわずかな量吸収することは、科学者の間では長い間理解されていましたが、近代科学のおかげで研究者は体内に存在する多くの物質を、ごくわずかな濃度まで測定することが可能になりました。しかしながらバイオモニタリングからわかることは、特定の化学物質が一時点において体内に存在するかどうか、という一事実のみです。

反農薬論者の中には、バイオモニタリングデータを拡大解釈して、いかなる量でも農薬が体内に存在することは、健康への承服しがたいリスクと主張しています。この意見は一般の人々に不必要な懸念を抱かせることになっています。

当社の見解

ダウ・アグロサイエンスは、バイオモニタリング法は科学的であり、農薬を含む化学物質のヒトへの暴露の理解に役立つ方法である、ということで支持しています。しかしながら、体内に物質が単に存在しているという情報だけでは、一般の人々や医療関係者にとってほとんど意味の無いことであると考えられます。体内で検出された農薬が健康への悪影響を及ぼす可能性があるか判断するには、検出された農薬レベルを、毒性や健康への悪影響を起こすことがわかっているレベルと比較しなければなりません。 この毒性作用を引き起こすレベルは、様々な研究から明らかにされ、農薬登録資料に記載されています。

以下の2003年1月の報告書に掲載された疾病対策センターの見解は重要な意味をもっています。

「環境中に存在する化学物質が血中や尿中に単に検出されたからといって、その化学物質が必ず病気を引き起こす原因とはならない。化学物質の毒性は投与量または濃度に依存している。少量の化学物質は健康に影響を与えないが、多量に存在すると病気の引き金になることもある。研究を進めることによってどれだけの濃度の化学物質が疾病を引き起こし、どれだけの濃度なら健康への影響を無視できるか明らかにしなければならない。」

クロルピリホスは広範囲の分野で使われていますが、特に農作物を害虫から保護するために多くが使われています。CDCが先ごろ実施した研究では、一般の人が人口全体としてクロルピリホスに暴露しているレベルは、米国EPA及び他国政府が確定した実験動物の健康に影響を及ぼすクロルピリホスのレベルの数百分の一に相当する低いレベルであることを明らかにしています。

ヒトがクロルピリホスに暴露した場合、クロルピリホスは直ちに分解され数日中に体外へ排出されます。クロルピリホスは環境と人体の両方で主に3,5,6-トリクロロ-2-ピリジノール(TCP)に分解されます。TCPは尿中で容易に検出され、クロルピリホスおよびその関連化合物に対する暴露のバイオマーカーとみなされ、CDCはヒトのバイオモニタリングでTCP濃度を測定しています。EPAはヒトの体内で検出されたTCPレベルは、毒性学的に何の作用も起こさないレベルであると結論を下しています。

TCPのバイオモニタリングデータは、ヒトの暴露評価と疫学的見地から考慮されてきました。さらにこれらのデータは、国民の健康と安全に責任を持つ米国EPAや他国の政府当局によって、クロルピリホスの登録の妥当性を検討する見地から広く審議が行われてきました。体内で検出されたTCPはさまざまな経路を通じて取り込まれたもので、クロルピリホスに対する暴露はその進入経路の1つに過ぎないとされています。TCPバイオモニタリングの結果を解釈するときは、必ずこの点についての注意が必要です。

要点 - クロルピリホスとバイオモニタリング


  • ダウ・アグロサイエンスは、クロルピリホス製品のラベル表示あるいは登録を受けているすべての使用方法に責任を持っています。米国EPAおよび他国の政府当局は、クロルピリホスに対するヒトの暴露の可能性について十分理解したうえで、登録制度を通じてクロルピリホス製品の使用場面と使用方法を規定しています。
  • クロルピリホスは広く使用されており、ほぼ40年にわたり幅広く研究が行われてきました。当社を含むメーカーは毎年新しい科学技法を用いて新しい内容の試験を引き続き実施しています。世界各国におけるクロルピリホスの登録は、社内データおよび公表されたデータでサポートされています。すべての農薬同様、クロルピリホスの使用は国民の健康と安全に責任をもつ政府当局により厳しく規制されています。
  • 農薬製品でこれほど徹底した研究が行われている製品は他にはありません。ヒトの健康や環境とクロルピリホスの関係についての研究や報告は3,600件以上にのぼり、その中には環境動態、環境毒性、神経毒性、食物を通じての摂取に関する評価、さらに専門委員会によるヒトの健康及び生態系への影響についての再評価が含まれます。
  • 食用農作物を保護するために頻繁に使用されることを考えると、極微量の暴露は容易に推定されることではありますが、クロルピリホスはヒトの体内で直ちに分解され、数日中に体外へ排泄されます。分解物が尿中でしばしば検出されるのはこのためです。微量の残留クロルピリホスが摂取される可能性は存在しますが、身体は速やかにクロルピリホスを代謝し排出します。
  • 反農薬論者は、「CDCの報告にあるようにヒトのクロルピリホスへの暴露がEPAの長期間暴露基準を超えている」と主張しています。しかしながらこれらの論者のデータの解釈は、CDCのデータをEPAの結論と比較してみると矛盾していることがわかります。彼らの主張は、尿中に検出されるすべてのTCPはクロルピリホスへに起因している、という前提に基づいています。しかしクロルピリホスが作物に使用されると、環境中で無毒のTCPに分解され、これがヒトに取り込まれている事実があり、これはEPAの評価でもはっきりと認められています。たとえこの論者のTCPデータに関する解釈をその主張どおり受け入れたとしても、ヒトの取り込むクロルピリホスへの量は、EPAや健康保護を担当する他の部局により確定された、実験動物に悪影響を引き起こすレベルより数百分の一の低い値です。
  • 他の毒性学データも考慮して、広い視野に立つと次のように考えられます。バイオモニタリングデータは、公衆衛生の担当部局がヒトがどの物質をどれだけ摂取したか理解するために重要で、また今後の研究への指針となります。しかしバイオモニタリングデータは、摂取のルートや、その物質が体内にどのくらいの期間存在しているか、その物質がヒトの健康に与える影響があるとしたらその影響がどのようなものかについては何も示していません。
  • 反農薬論者がCDCのデータを曲解して伝え、一般の人々や医療関係者の間で混乱を引き起こしていることは大変遺憾です。ダウ・アグロサイエンス社は、政府の専門家や医療関係者と引き続き協力してこのデータを解釈し、自社製品の安全使用を確実にするために専心努力していく所存です。