食品安全と食物連鎖

食品中の残留農薬に関して懸念する声が消費者の間に高まってきたことを受けて、各国政府あるいは国際機関の関連部局は、消費者に高品質の野菜や果物を供給する一方で、消費者を有害な残留農薬から守るために、広範な試験制度を確立しました。

庭園や農地に使用する農薬の登録に際しては、その製品のヒトの健康に対するマイナスの影響の可能性評価が義務付けられています。当該農薬のヒトの健康への影響のパターンを予測するために、マウスやラットの実験動物に、微量から非常に多量まで様々な用量の農薬をエサを通じて摂取させます。毒性学専門家は、一定量の農薬を摂取したあと被験動物が示した急性中毒、亜急性中毒、慢性症状、突然変異性あるいは生殖系、神経系などに対する影響について観察・記録します。そのような試験から得られた知見は、ヒトへの影響を判断するために毒性学専門家や医学専門家によって評価が行われます。

  1. 米国環境保護庁(US EPA)、欧州連合(EU)委員会、日本の厚生労働省(JMHLW)を始めとする政府当局、および国連食糧農業機関(FAO)や世界保健機関(WHO)などの国際機関の毒性学専門家は、評価の最初のステップとしてその毒性試験が研究ガイドラインや医薬品安全性試験実施基準(GLP)に基づいて行われたかどうかをチェックし、研究のレベルを判定します。
  2. 第2のステップは、実験動物に悪影響を起こさない殺虫剤の最高投与量を決定することです。この投与レベルは無毒性量(NOAEL)と呼ばれています。NOAEL値は一回投与あるいは複数回投与の毒性試験の結果に基づいて決定されます。
  3. NOAELは、動物データからヒトの健康への影響を推定するということとヒトの個人差を考慮に入れて、通常安全係数100(安全係数範囲は10から1,000)で除算され、1日当たりの許容摂取量(ADI)とされます。米国では「参照用量(RfD)」という言葉がADIの代わりによく用いられます。
  4. ADIは一般的に、1日当たり体重1kg当り摂取される化合物の量をミリグラム(mg/kg)で表わします。それは毎日70年の生涯にわたって経口摂取した場合、ヒトが健康を害することなく摂取できる残留農薬の量です。ADI は食用作物中の農薬残留を評価する上での、毒性学的指標として使われます。
market

ここで確認しておきたいのは、ADI は急性中毒を引き起こすレベルを示すものではない、ということです。1日当たりの平均摂取量がADI 以下であれば、時折ADIを超過した量を摂取しても問題はおきないと考えられます。ADIは1日当たりの許容摂取量と表現されていますが、これは日々の摂取量に対してではなく、長期にわたる平均摂取量に対する基準値としての意味をもっています。