カンキツ果実を加害するアザミウマ類

カンキツのアザミウマといえばチャノキイロアザミウマのことであったが、近年、産地によっては別種のアザミウマ類が発生し、それらの果実被害が無視できなくなってきている。これらアザミウマ類による果実被害や防除対策について、新害虫のハナアザミウマ類に関する知見を加えて、佐賀県果樹試験場の口木専門研究員にご執筆いただいた。

以下 2010年12月発行技術特報より転載


カンキツ果実を加害するアザミウマ類

佐賀県果樹試験場 口木 文孝

カンキツでは、チャノキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ハナアザミウマ類等のアザミウマ類が果実を加害します。これらのアザミウマ類は、口器で果実表面を加害するため、加害された部分は傷となって外観を損ね、商品価値を下げたり、果実が腐敗する原因となります。


露地栽培での被害

露地栽培では、チャノキイロアザミウマが開花期~10月頃までの長い期間加害します。5~6月頃の早い時期に加害されると果梗部周辺にリング状の傷が発生し、6月中旬以降に加害されると果実の側面から果頂部にかけて褐色となる部位が発生します。

近年、秋の果実の着色期にハナアザミウマ類(ビワハナアザミウマ、ヒラズハナアザミウマ、ハナアザミウマなど)による被害が発生し問題となっています。加害された果実には、後述するハウスミカンと同様の症状が発生します。このハナアザミウマ類は、果実が着色し始める9月中旬頃から、まず着色の早い極早生温州園へ飛来し、次に早生温州、さらに普通温州へと次々に飛来しながら加害していきます。

ハナアザミウマ類による被害は、梅雨明け後~秋期に高温・乾燥条件で推移した年に多発する傾向にあります。近年は多発傾向が続いており、佐賀県では2009年及び2010年に連続して被害が発生しています。

温州ミカンの果梗部周辺の被害 チャノキイロアザミウマによる温州ミカンの果梗部周辺の被害(早い時期の被害)

ビワハナアザミウマ成虫 ビワハナアザミウマ成虫(佐賀県農業試験研究センター 衞藤特別研究員提供)

露地早生ミカンに寄生していたアザミウマ類 露地早生ミカンに寄生していたアザミウマ類(2009 年10 月佐賀県内各地で採集した個体)佐賀県農業技術防除センター調査


ハウスミカン及びハウスキンカンにおける被害

ハウスミカン(温州ミカン)では、ネギアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ハナアザミウマ類(ヒラズハナアザミウマ、ハナアザミウマ等)が、果実が着色し始める頃から飛来して、加害します。同一樹内でも、着色の早い果実ほど被害を受けやすくなります。ハウスミカンの果実が着色する5月~7月頃は、アザミウマ類の野外における密度が高い時期と重なるため、ハウス内へは次から次に侵入してきます。

これらのアザミウマ類はカンキツではほとんど増殖せず、ハウス外から飛来した成虫が直接果実を加害します。また、狭い場所を好み、果実と果実が接触した部分や果実と葉が接触した部分などに寄生するため、その部分に被害が多くなります。加害された部位は、初めのうちは白っぽく変色しているだけですが、時間の経過に伴い黒褐色に変色したり、腐敗して問題となります。

また、ハウスキンカンでは、開花期に加害された部分がコルク化して突起状となるため、果実の外観を損ね、商品価値を低下させます。その後も、着色期にはハウスミカンと同様の被害を受けます。

ハウスミカンの果実被害(初期症状) ハナアザミウマ類によるハウスミカンの果実被害(初期症状)

ハウスミカンの果実被害(褐変した部分) ハナアザミウマ類によるハウスミカンの果実被害(褐変した部分)

アザミウマ類によるハウスキンカンの被害 アザミウマ類によるハウスキンカンの被害


アザミウマ類の増殖源をなくすこと

まずは、アザミウマ類の発生源をなくすことが重要です。そのため、チャノキイロアザミウマでは増殖源となるイヌマキ、サンゴジュ等をカンキツ園周辺に植裁しないこと及び除去することです。また、ミカンキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、ハナアザミウマ類では増殖源となる園内外の雑草などをきちんと管理することも重要となります。


光反射資材を利用した園内への侵入防止

高品質果実生産を目指して光反射資材シート(タイベックシートなど)を園内に設置すると、紫外線の反射によってアザミウマ類の園内への侵入を防ぐことができます。また、施設の場合、光反射資材を織り込んだ防虫ネットを開口部に設置することでも、アザミウマ類の侵入を防止することができます。ただし、いったん園内に侵入した個体には効果がありませんので、必ず薬剤防除と組み合わせてください。


アザミウマ類を対象とした散布薬剤及び散布時期

アザミウマ類は、種類によって防除時期及び防除薬剤が異なる点に注意が必要です。露地栽培では、チャノキイロアザミウマに対して開花期頃、6月中~下旬頃、7月中~下旬頃、8月中~下旬頃が防除時期となります。ネオニコチノイド系薬剤、スピノエースフロアブル、コテツフロアブル、ハチハチフロアブルなどを組み合わせて散布します。

露地栽培でハナアザミウマによる被害が懸念される場合は、果実が着色し始める頃(9月中旬頃)以降の防除が必要です。スピノエースフロアブル、ハチハチフロアブルなどを1~2回散布します。

ハウスミカンでは、果実が着色し始める頃以降に被害が発生するため、この時期に防除を徹底する必要があります。ハウスキンカンでは、開花期と果実の着色始期以降の防除が必要です。

ハウスミカン及びハウスキンカンで加害種がはっきりしない場合は、各種アザミウマ類に高い効果を示すスピノエースフロアブルを散布します。加害種が明らかな場合は、スピノエースフロアブルだけではなく、ミカンキイロアザミウマであればコテツフロアブル、ダーズバンDF(ただし、ハウスキンカンは適用外)など、ネギアザミウマであればハチハチフロアブルなどを組み合わせながら散布します。なお、ハウスミカンでは、アザミウマ類の成虫が次々にハウス内へ飛来して加害するので、薬剤の残効に注意し、再び寄生を確認したり、被害が発生し始めたら、薬剤を再度散布してください。薬剤及び散布条件にもよりますが、前回の薬剤散布後約7日~15日程度経過したら、注意が必要となります。


カンキツのアザミウマ類に対する主要な薬剤

露地栽培 チャノキイロアザミウマ スピノエースフロアブル
モスピラン水溶剤
ベストガード水溶剤
ハチハチフロアブル
コテツフロアブルなど
ハナアザミウマ類 スピノエースフロアブル
ハチハチフロアブルなど
ハウスミカン
ハウスキンカン※
ミカンキイロアザミウマ スピノエースフロアブル
ダーズバンDF(※ハウスキンカンは適用外)
コテツフロアブルなど
ネギアザミウマ スピノエースフロアブル
ハチハチフロアブルなど

転載終り(2010年12月の寄稿記事から転載、内容は当時の情報に基づく、写真・文章の無断利用を禁じる)

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